本日の仮想通貨ニュースです。
1.イーサリアム「マージ」後のチェーン分岐の可能性に注目高まる
マージ後のマイナーの移行先
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)がPoS(プルーフオブステーク)に移行するアップグレード「マージ」が近づくにつれて、既存のETHマイナーがどこに移行するかに関心が集まっている。
22年9月19日に仮予定されているマージ後に、イーサリアムのPoW(プルーフオブワーク)が終了することにより、ETHを採掘していた約6,600億円(50億ドル)規模のマシンが代替案を探す必要性が生じる。その多くは中国系マイナーとも報じられている。
マージとは
イーサリアム・ブロックチェーンのコンセンサス(合意形成)アルゴリズムを「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」から「PoS」へ移行する大型アップグレード。現在のメインネットとコンセンサス形成を担う新しいチェーンを統合することで、新たなネットワークが構成される。
現在のところ、イーサリアムマイナーには主に2つの選択肢がある。1つはマージ後により収益性の高いPoWチェーンに切り替えること。ETHと同じGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)で採掘できるチェーンの代表例がイーサリアムクラシック (ETC) である。
市場では現在、イーサリアムクラシックに対する期待が最も高く、ETCの価格は過去1か月で約170%増加。ETCのハッシュ値に対する収益率もETHのそれを上回った。
しかし、ETHとETCの価格差は約42倍あることから収益性の低下は否めない。ハッシュレートも約37倍の開きがあるため、イーサリアムマイナーが移行することでネットワークシェアが歪み、51%攻撃のリスクも高まる。
イーサリアムマイナーの別の選択肢は、PoS移行後もイーサリアムPoWチェーンを採掘し続けることで、イーサリアムブロックチェーンをハードフォーク(分岐)する方法。2016年には、約65億円相当の資産が不正流出し、その帳消しを目的としたハードフォークが物議を醸し、チェーン分岐によってイーサリアムが誕生した。
仮想通貨トレーディング会社Galois Capitalのアンケート調査によると、ほとんどの回答者(53.7%)がイーサリアムがPoWからPoSにスムーズに移行すると予想する一方で、回答者の3分の一が「ETHPoW」が分岐して「ETHPoS」と対立すると回答した。
ビットコイン(BTC)やイーサリアムのマイナー分野の重要人物とされるChandler Guo氏も、ETHマイナーに「ETHPoW」への移行を扇動しているようだ。

エコシステムの持続性
マージ後にマイナーがETHPoWやETCのどちらを選択するにしても、トークン価格をどのように維持するかが焦点となる。採掘コストが収益を上回った時点でマイナーは撤退せざるを得ない。
中国マイニング大手Bitmain傘下のマイニングプールAntPoolは26日、イーサリアムクラシックのエコシステムに13億円(1,000万ドル)を投資すると発表したが、現時点でイーサリアムクラシックネットワークのエコシステムは規模が小さい。データサイトDefiLlamaによると、ETCネットワークにロックされた総資産価値(TVL)は、3,190万円(24万ドル)だ。(執筆時点)
それに対してイーサリアムのDeFiエコシステムは9兆円(680億ドル)の規模がある。また、フォークによりETHPoWが生まれてフォークコインが市場でサポートされたとしても、これらのDeFi資産までダブルになるわけではない。
DeFi(分散型金融)にとって重要なステーブルコインの発行企業テザー社のPaolo Ardoino最高技術責任者(CTO)は、ETHPoWをサポートする可能性について以下のように語った。
イーサリアムの動向が注目されているが、Tetherの役割はコミュニティをサポートすること。つまり、決定が下されるのは純粋に需要と、そして当然セキュリティだ。
Galois Capitalの調査によると、ほとんどの回答者は、「ハードフォークが発生しても取引所やプロジェクトがETHPoWではなく、ETHPoSをサポートする」と考えている。DeFiのに重要な価格データを送るオラクルソリューション「Chainlink」の有識者は以下のように述べている。
マージ後にマイナーがPoW版のイーサリアムを採掘し続けたとしても深刻な懸念は生じない。すべてのオフチェーン(データ)の連動関係が壊れれば、完全に役に立たないエコシステムになる。フォークされたトークンをダンプすることぐらいしかできない。