他方では、従来のPoWを存続させるためにマイナー主体の暫定ガバナンスグループ「EthereumPoW」が立ち上がり、イーサリアム・ブロックチェーンを分岐(フォーク)するための準備を進めている。事前アナウンスによると、EthereumPoWのチェーンとその仮想通貨(ETHW)は、マージ完了から24時間以内に開始する予定だ。
マージ後のポイント
マージの目的はコンセンサスアルゴリズムを変更することにあり、ネットワークのキャパシティを向上する類のアップグレードではない点に注意する必要がある。ユーザーが取引手数料としてネットワークに支払うガス(GAS)や、トランザクションの処理能力に大きな変化は生じない仕様だ。
データサイトDuneによると、イーサリアムのステーキング・ネットワーク(コンセンサスレイヤー)には9月14日時点に42.8万のバリデーターノードが存在し、ETH供給量の11.3%に当たる1,370万ETH(約3.2兆円相当)がロックされている。
こうしたバリデーターやステーキング参加者に年利4%~6%の報酬が日々配分されているが、彼らが預けたETHや受け取っている報酬はマージ完了後もロックされたままである。
これらのイーサリアムはマージから6か月~1年後の実施が見込まれる「Shanghai」アップグレードで出金できるようになる計画だ。さらに、Shanghai完了後も一度に大量のバリデーターが離脱して不安定になることを防ぐため、イーサリアムネットワークに出金制限が設けられている。
こうした構造を加味してブロックチェーン分析企業Nansenは、マージが無事完了してPoS移行リスクが解消された後にイーサリアムのステーキング総量が増加し続ける可能性を指摘した。
Shanghaiアップグレードが行われる2023年頃まで出金できないため、ステーキングETH量はそれまで上昇し続けるしかないことを意味する。市場の状況によっては、さらに山を作る可能性がある。
主張の根拠としてNansenは、クジラ(大口投資家)が22年の弱気相場に継続してETHを蓄積し続けているデータを示した。また、ETHステーキング比率(11.3%)がPolygon(41%)やSolana(77%)等の競合と比較して低い点を指摘した。
PoSとは
保有(ステーク)する仮想通貨の割合に応じて、ブロックを新たに承認・生成する権利が得られるコンセンサスアルゴリズムのこと。
有識者のコメント
イーサリアムの共同設立者であるヴィタリック・ブテリン氏はMergeがファイナライズしたと報告。以下のようにコメントした。
これはイーサリアム・エコシステムにとって大きな瞬間だ。
マージ実現に協力した全ての人は今日、誇りに思うべきだ。
大手仮想通貨取引所バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOは以下のように祝辞を述べた。
マージが成功。PoSの起動が開始した。
21年3月に高額NFT「5000 days」がオークションで落札したデジタル・アーティストのBeeple氏はイーサリアムのThe Mergeに因んだ作品を投稿した。
なお、おおまかなステージとしては、Mergeの後は以下の流れでアップグレードを行う計画だ。
1.The Merge(完了済み)
2.The Surge
3.The Verge
4.The Purge
5.The Splurge